カマドーマ談

生まれた家は、その頃茅葺屋根だった。

お風呂は槇、そこにかまどがあったのだ。灰まみれの焚口とレンガを積んだような壁、湿気っているのか乾いてるのか、そんな所にカマドーマは居た。玄関の隅とか縁の下にも隠れてた。

それが小学校に上がる頃、屋根はトタンに替えられた。家1件分の茅が無いのと、茅葺職人さんが居ない為だったらしい。

今の若い人は藁で屋根を葺いていると思っているみたいだけど。けして藁ではない。

藁はお米が稔る草、柔らかい。これで屋根を作ったらすぐ腐ってしまうのだ。茅は干すと木のように固くなってそれを束にして屋根にするのだ。

葺きあがった屋根を下から見ると茅の切り口が藁のように見えるから、藁だと思っているのかも。

今はトタンに葺き替えられた家もない。弟が新築したのだ。

もちろんかまども無くなった。スイッチ1つでお風呂は沸く。とっても便利文句はない。

けれどカマドーマの住むところはどこにも無くなった。