へび

梅雨の蒸し暑い日、雨は降ってない、こんな日が来ると思いだす。

その頃、へき地に親子4人で住んでいた。山の中、生まれたところよりもっと山の中の1軒屋。

前の日は雨で洗濯物は部屋干ししてた。朝起きたら雨が止んでいたので外に洗濯物を出そうと、両手に洗濯リングを持って足元を見ずに濡れ縁に出た。

1歩目を踏み出したら。ムギュッとホースを踏んだ。あら?こんな所にホース置いたの誰?いや、外にホースなんか有った?

ホースだと思って足元を見てびっくりです。大きなへびのお腹のあたり踏んでる!

しかも、お腹のあたり踏まれて痛かったのか、くの字の曲がって部屋の中に入ってこようとしている。

大変!部屋では子供たちがまだ寝てる。へびは手でつかめないし、ここで部屋の中に入られたらおしまい。

考える間もなく、へびを蹴飛ばしてました。洗濯リングを持ったまま。

今までこんなナイスな蹴り入れたことないぐらい、へびはくの字に曲がったまま飛んでいきました。庭の向こうの藪まで。

2匹目のへびがいないか確認して、洗濯物を外に干し、すぐ戸を閉めた。

きっとへびもこの暑苦しさ、雨上がりに家の濡れ縁で伸びをしてたんだなと思った。可哀想のことしたかな。でも部屋に入るのはお断り。

夜寝てると蛙が顔の上を飛び、蜂が巣を作り、寒くなるとネズミが屋根裏を走ったその家は今は無い。子供たちもその家での生活を覚えていない。

たいした病気のせず、怪我もせずに大笑いして過ごしたその頃は、若かったのか、呑気だったのか。