茅葺屋根の主

子供の頃住んでいた実家は茅葺屋根だった。

築300年ぐらいだっただろうか、かなりのオンボロ家だった。

小学校に上がる頃、萱葺き職人が集まらず茅葺屋根からトタン屋根に葺き替えられた。

子供心にオンボロ家がちょっと立派になったような気がして嬉しかった。

ところが暫くして夜家族みんなでテレビを見ていたら、縁側あたりでバタンバタンと物音がする。

懐中電灯を持って見に行くと、縁側の天井の隅からへびが首を出して暴れていたのだ。

なんで?大きいへびだし、落ちてきても捕まえられないし、大変!

その日は父が物干し竿で突いてへびをまた屋根裏に押し戻したけれど、寝てる間に襲ってくるんじゃないかと心配だった。

次の日おばあちゃんが屋根をトタンにしたから家の主のへびが逃げ出したんだと言い出した。

茅葺屋根は夏涼しく冬暖かい、けれどトタン屋根は夏暑くて冬寒いらしいのだ。屋根裏に住むへびにはつらい。

でもそんな事言ったってもう屋根はトタンに葺き替えてしまっている。

へびの居る所は無い。

その後そのへびがどうなったのか知らない、家の人に見つからないで無事に逃げ出したんだろうけれど。

おばあちゃんはへびが逃げ出してがっかりしたようだった、この家の主だったから。

でも夜に天井から出てくるのは本当に困る、たとえどんな守り神だろうと自分の家だったら絶対に拒否するのだ。