買わなかった指輪

おとうさんと結婚の約束をしたとき二人とも20歳。

約束の印に一万円ぐらいのファッションリングを貰い、五千円ぐらいの腕時計をお返しした、二人の中ではそれで十分、本当に若かった。

怖いものは何もない、自由気儘な二人だった。

特にデキちゃった訳でもなく、二人で一緒に居たかっただけなのだけれど、双方の親を説き伏せるのは大変だった。

けれど結局親は折れ、結婚式の準備に取り掛かった。

その中でおとうさんが結婚指輪をつけないと言い出した。

かっこ悪いから仕事に指輪をつけていかないと言う。男の人ってそんなこと言うんだと思ったけれど、結論から言えば指輪は無くても困らない。

買わない事にした。

それに頭のどこかに指輪は高いから、買わないとその分お金が浮くなみたいな考えがあったのだ。

だから今まで二人とも結婚指輪をつけたことは無い、そしてそれで困った事も無い。

もしあの時指輪を買っていたらもっと幸せな結婚生活だったのか、それとも今と変わらないのか、その答えは分からないけれど、

今日は結婚記念日、30回目、真珠婚式だ。